コレステロールや中性脂肪の値が高い人の方が脳卒中を起こし難く、発症した場合状態が良いとの見解を東海大・大櫛教授等がまとめている。同教授等はこれまでにも、これらの値が低いほど死亡率が高いといった研究結果を発表。悪玉とされるLDLコレステロールも中性脂肪も実は善玉なのにリスクが強調され、無駄な治療がなされていると問題視している。 (参考:日本経済新聞)(M.Y)
肥満になりやすい遺伝子変異を持っている人でも、持たない人と同等にやせられることを栗山進一・東北大准教授(公衆衛生学)らが調査で明らかにした。遺伝子を調べて肥満体質の型を判断し、効率的な減量法を指導する「遺伝子ダイエット」が話題だが、同教授は「現時点で科学的根拠があるとは言いがたい」と指摘する。調査は福島県内で実施した減量教室参加者のうち同意が得られた40~60代の37人(男性9、女性28)に対して、「β3アドレナリン受容体遺伝子」の変異の有無と減量の関係を調査。同遺伝子は代表的な肥満関連遺伝子で、これに変異がある人は変異がない人に比べて基礎代謝が低いため、肥満になりやすいとされている。被験者のうち、変異があったのは12人。BMI(体格指数25以上が「肥満」)は「変異あり」群の平均が25.6、「変異なし」群は24.8であった。全員に対して保健師や管理栄養士が6カ月間食生活や運動を指導した結果、変異あり群の体重は平均2.52kg減り、BMIは1.08減少。一方、変異なし群は体重1.89kg減、BMI0.8減という結果で、両群の間に統計的に意味のある差はなかった。このことより、遺伝子変異の有無に関わらず、同じ方法で同程度の減量が出来た。遺伝子変異だけが肥満を起こすわけではなく、両者の関係にはまだ議論があると言えそうだ。(参考:毎日新聞)(M.Y)
肥満児の動脈は、実際の年齢よりも30歳以上老化していることが新たな研究で示されている。 米ミズーリ大学の研究グループは、超音波を用いて6~19歳のハイリスク小児70人の頸動脈内膜中膜複合体厚(CIMT)を測定。CIMTはアテローム性動脈硬化症の評価に用いられるもので、一般に小児では成人よりもずっと低く、年齢とともに増大していく。成人では、CIMTに心臓発作や脳卒中リスクとの関連がみられ、一般にCIMTは低いほどよいとされている。 被験者は平均13歳、殆どが白人であり、約半数が男児。57%はBMI(肥満指数)が同年齢での95パーセンタイル(計測値の分布を小さい値から並べてパーセントで見た数字)値を超えていた。測定の結果、平均すると被験者の「血管年齢」は、実際の年齢よりも30歳高かった。肥満児および血液中のトリグリセリド(中性脂肪)濃度が高い小児ほど血管年齢が高い傾向があったという。 米テキサスA&M健康科学センター内科准教授・Catherine McNeal博士は、今回の研究は小規模なものであり、いくつかの統計データが欠けているため、この結果が決定的なものとは断言できないとする一方、蔓延する肥満の問題を解消するには、出生前に両親を教育することから始める必要があると指摘。また、若い親の多くは子どもの栄養所要量について理解しておらず、カロリーの摂取量と消費量のバランスが取れていない。2年ほど前の研究では、この世代が親より長生きできない最初の世代となる可能性が示されているともみなしている。 (参考:米国心臓協会報告)(M.Y)
米国の研究者が、過体重の成人の半分以上と肥満の男女の約3分の1は血圧やコレステロール値など心臓の健康状態の指標が正常であり、肥満と健康が両立する可能性を示す研究結果を明らかにしている。その一方で、標準体重の米国人成人の4分の1近くに、心疾患や糖尿病の危険因子がみられたと見解。同研究は、1999~2004年にかけて実施した男女5,440人の健康診断のデータとアンケート結果に基づいて行われ、医学専門誌アーカイブス・オブ・インターナル・メディスンで発表している。研究を監修したアルバート・アインシュタイン医科大学のJudith Wylie-Rosett氏の、「肥満についてはまだ十分に解明できていない」との見解からも、新たな捉え方として認識しておくレベルに留めるのが賢明のようだ。 (参考:ロイター通信)(M.Y)
ロンドン大学の研究チームが、肥満や過体重の人はそうでない人に比べ、移動により多くの燃料が必要となったり、より多くの食料を食べたりすることによって、地球温暖化に寄与しているとの見方を示している。また、肥満人口の増加により、その問題(温暖化)が将来的に深刻化すると警告。研究チームのフィル・エドワーズ氏等は、肥満人口増加の問題はさらに食料不足やエネルギー価格の上昇にもつながり、鍵になる要素と見解している。世界全体では現在、少なくとも4億人の成人が肥満とされている中、世界保健機関(WHO)の推計によると、2015年までに成人23億人が過体重となり、肥満の人は7億人を超えるとされている。 (参考:ロイター通信)(M.Y)
筋肉でのエネルギー消費量を調節するたんぱく質を、東京大の永井良三教授らのグループが突き止めた。肥満やメタボリックシンドロームの治療薬開発に役立つと期待される。科学誌ネイチャー・メディシン(電子版)に発表した。研究グループは、KLF5と呼ばれるたんぱく質が通常の半分しかないマウスを作製し、高脂肪食を与えたところ、基礎代謝量が上がっており、通常のマウスと比べて食べる量は2倍でも、体重増加は少なく、脂肪肝にもなりにくくなった。KLF5は通常、SUMOというたんぱく質とくっついて脂肪を燃やす遺伝子の働きを抑えていた。また、PPARγという別のたんぱく質につくと、逆に脂肪を燃やす遺伝子の働きを促すことが分かった。PPARγを活性化させる物質は、高脂血症や肥満の治療薬として米国で臨床試験に入っている。永井教授は「詳しい機構が分かったことで、効率の良い、副作用が少ない薬の開発につながる」と話している。(参考:読売新聞)(Y.A)
米バファロー大学のジェニファー・テンプル医師らの調査で、先天的にドーパミンの少ない人間は大食いする傾向が強いことがわかった。テンプル医師は、細胞内のドーパミンD2受容体の数が脳の活動に差を生み出す点に着目しており、ドーパミンが少ない人は食欲が旺盛となることがわかった。注意欠陥過動性障害(ADHD)治療に使われている医薬品はドーパミンに影響を与えるものであることから、これを利用してドーパミンを調整すれば減量に効果をもたらす可能性があるとしている。
調査では18-40歳の男女で、肥満である29人と肥満でない45人の食べる量を各種テストから観察している。なお、ドーパミンは交感神経節後線維や副腎髄質に含まれるホルモンの一種で、脳の深部から分泌される。(参考:MSN産経ニュースほか)(N.U)
Diet Induced Thermogenesisの略で「食事誘導性熱代謝」などと訳される。人間のエネルギーの消費は大きく3つに分けられる。(1)基礎代謝生命を維持するために最低限必要な代謝で、じっとしていても消費されるエネルギー。1日の消費エネルギーの約60%を占める。(2)生活活動代謝(運動+運動以外の身体活動)運動や日常生活における動作によって消費されるエネルギー。1日の消費エネルギーの20~30%を占める。(運動0~10%、運動以外の身体活動20~30%の内訳)(3)食事誘導性熱代謝(DIT)食事をしたときに消費されるエネルギー。1日の消費エネルギーの約10%。DIT(食事誘発性体熱産生)反応は朝が最も高くなる。そして時間とともに下降する。そのため朝食は、多少食べすぎたとしてもDIT反応の高まりによって消費エネルギーが活発になる。(Y.A)
神奈川県立保健福祉大学・中村教授らが、食事時間とエネルギー消費量の関係より、1日3度の食事でも朝型の食生活の方が夜型より太りにくいという見解を示している(調査:喫煙しない女子大生18人に、同じ食事(各約500kcal)を7時、13時、19時にとる「朝型」と、13時、19時、1時にとる「夜型」の2種類の食生活を1日ずつ交互に体験)。 同調査で注目したのが、食べ物をかんだり飲み込んだり、胃や腸で消化吸収されたりする際に消費されるエネルギー(DIT)であり、糖や脂肪が体内で燃焼する際、呼気中の酸素や二酸化炭素の消費や排出の量が多くなる。この仕組みを利用した呼気分析でDIT値を算出。食事前から3時間の累積値で比較している。 時間別では7時の食事での値が最も高く、対して低かったのは1時。因みに13時と19時の値は「朝型」「夜型」も不変であった。3食分の合計でみると、「朝型」では体重1kg当たり平均0.905kcal(体重50kg換算=45.25kcal)で、「夜型」の0.595kcal(同=29.75kcal)を上回った。 これより、「きちんと6時間おきに食事をとっても、深夜に食べると1日のエネルギー消費量が低くなり、結局、太りやすい体になる」という結論を導き出した。 朝のDITが高くなる要因は不明だが、内臓の働きを調整する自律神経が関係しているとみなされているようだ。 (参考:朝日新聞)(M.Y)
米ローレンス・バークリー国立研究所・ポール・ウィリアムズ氏によると、数千人の男女の走る習慣と体重を7年以上にわたり追跡した記録を分析した。その結果、沢山走る人(男性で1週間に32km以上、女性で同16㎞以上)の場合、走る距離を短くした時に増える体重は、走る距離を長くしたときに減る体重とほぼ同等だった。 ところが、1週間に数㎞しか走らない人が走るのを止めた時に増える体重は、同じ距離を走っていた時に減る体重を上回っていた。また、走る距離を短くした時の体重増は、沢山走る人の4倍に達していた。 運動を止めた時のしっぺ返しはこれまで考えられていたものより大きく、米国で肥満が増えている理由の一つとも考えられている。中途半端な運動はダイエットに繋がらないどころか、却って太ってしまう恐れがあることから、規則的に継続して運動することがまさに必要と言える。 (参考:朝日新聞)(M.Y)