疲れを感じる原因となるたんぱく質を、東京慈恵会医科大がマウスを使った研究で突き止めている。このたんぱく質は、徹夜や運動の直後に心臓や肝臓、脳などで急激に増え、休むと減る。元気なマウスに注射すると、急に疲れた。疲労の謎を解く鍵として、科学的な疲労回復法の開発に繋がりそうだ。
同教授等は、人が疲れると体内で増殖するヘルペスウイルスに関係するたんぱく質に注目し、FFと命名。水があると眠れないマウスを底に1㎝ほど水を張った水槽に一晩入れて徹夜状態にし、その直後に臓器を取り出しFFの量を調査した。
その結果、睡眠をとったマウスに比べ、徹夜マウスではFFが脳、膵臓(すいぞう)、血液で3~5倍、心臓と肝臓では10倍以上も増えていた。2時間泳がせた場合も同様に変化した。どちらも休息後は平常値に戻った。
さらに、FFを元気なマウスに注射すると、大好きな車輪回し運動をほとんどしなくなった。疲れの程度に応じて増減し、かつ、外から与えると疲れが出現するという「疲労原因物質」の二つの条件を満たした。
FFは細胞に対する毒性が強く、心臓、肝臓で特に増えるため、過労に陥ると心不全や肝障害が起きやすくなるという現象に関係している可能性が高い。
運動疲労の原因とされていた乳酸は、運動すると筋肉中に増えるが、疲労の程度とは関係せず、筋肉に注射しても疲れが出現しないため、原因物質ではないことが実証されている。
同教授の見解からFFは、疲労が起きるとすぐに反応するため、疲労に対し最初に働く回路と判断。正確な疲労の測定装置や、科学的な疲労回復法の開発に繋がると期待されている。 (参考:朝日新聞)(M.Y)
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